健康食品に関しての薬機法について弁護士が解説 ~EC事業者のための法律講座(薬機法③)~

執筆者:弁護士 原 隆(はら たかし)

原総合法律事務所 代表弁護士

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 化粧品やコスメなどの美容製品や健康食品を扱われるEC事業者の方は、しばしば「『薬機法』に気を付けないといけない」、という話は耳にされると思います。EC事業者にとって薬機法は特に商品の表示や広告の方法で気を付けなければならない法律です。違反すると刑事事件になって逮捕されてしまったり、巨額の課徴金を課せられたりなど大変なことになってしまう場合があります。今回は、いわゆる健康食品にスポットを当てます。

1 健康食品と薬機法

(1)薬機法における健康食品の扱い

薬機法で規制される商品は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の5種です。そのため、一般に健康食品といわれる製品はこれらに含まれず直接薬機法で規制を受けるものではありません。本来一般的な食品としての扱われるべきものです。

しかしながら、一般的な食品も医薬品的な効用や用法を表示するなどの事情があると、薬機法上は「医薬品」としての扱いを受けることとなります。しかも、このような場合に医薬品としての承認を得ていることは稀でしょうから、 未承認医薬品ということとなり、薬機法88条(未承認医薬品の広告の禁止)に違反することとなってしまいます(2年以下の懲役または200万円以下の罰金)。 

そのため、EC事業者の方がサイト上で何らの承認をも受けていない健康食品について表示する際には、その表示が医薬品的な表示とならないように十分に注意をする必要があります。

(2)「医薬品」の判定

 それでは、どのような場合に、健康食品が「医薬品」として扱われて薬機法の規制の対象になってしまうのでしょうか。昭和46年6月1日に厚生省より出された「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(通称「46通知」)により、「医薬品」に該当するか否かの判断は、以下の要素のより行われています。

①成分本質:医薬品専用の成分を指定しているか

②効能効果:身体の変化を表現しているか

③形  状:医薬品と思わしき形状であるか

④用法用量:決まった用法用量が明示されているか

まず、①医薬品とされる成分本質が配合または含有されている場合は原則として医薬品とする。医薬品とされる成分本質が配合または含有されていない場合であっても、②効能効果、③形状、④用法用量が医薬品的である場合は原則として医薬品とみなされる、という判断の流れです。

以下、各要素について詳しく見ましょう。

(3)各要素について

ア ①(成分本質)について

厚生労働省が公表している医薬品リストに掲載されている成分本質(原材料)を1種でも原材料として使用したものは原則として「医薬品」と判断されます。
一方、非医薬品リストに掲載されている成分本質(原材料)は、薬機法上は原材料として使用した場合、それだけで医薬品に該当すると判断されません。

イ ②(効能効果)について

(ア)判断する上での対象となる表示方法は以下の通りです。

(参照:東京都福祉保健局「医薬品的な効能効果について」)

  • 製品の容器、包装、添付文書などの表示物
  • 製品のチラシ、パンフレット等
  • テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットなどによる製品の広告
  • 小冊子、書籍
  • 会員誌、情報誌
  • 新聞、雑誌などの切り抜き、書籍や学術論文等の抜粋
  • 代理店、販売店に教育用と称して配布される商品説明(関連)資料
  • 使用経験者の感謝文、体験談集
  • 店内および車内等におけるつり広告
  • 店頭、訪問先、説明会、相談会、キャッチセールス等においてスライド、ビデオ等又は口頭で行われる演述等
  • その他特定商品の販売に関連して利用される前記に準ずるもの
(イ)医薬品的な効能効果とされる表現
ⅰ 病気の治療又は予防を目的とする表現

「ガンに効く」「高血圧の改善」「生活習慣病の予防」「動脈硬化を防ぐ」「緑内障の治療に」など

ⅱ 体の機能の一般的増強、増進を目的とする表現

「疲労回復」「体力増強」「精力回復」「老化防止」「学力向上」「新陳代謝を高める」「血液を浄化する」「風邪を引きにくい体にする」「肝機能向上」「細胞の活性化」

ⅲ 医薬品的効果を暗示する表現

「体質改善」「血液をサラサラにすると言われている~~を主原料にしています。」「~~(原料名)は、日本○○学会でガンに効果があるということが発表されました」「便秘気味の方に」「摂取後、一時的に下痢や吹き出物などの反応が出ることがありますが、体内浄化のための初期症状ですのでそのまま摂取を続けてください。」「食品なので医薬品のような速効性はありませんが、じわじわと効果があらわれます。」

  ⅳ「栄養補給」についてはケースバイケース

〇「働き盛りの方の栄養補給に」、「発育時の栄養補給に」(理由:病的な健康状態に関係のない対象年齢等は可)

×「病中病後の体力低下時の栄養補給に」「~~(栄養成分)」は、体内で動脈  硬化の防止に役立っています。

ⅴ「健康維持」、「美容」は医薬品的な効能効果に該当しない

〇「~~(栄養成分)は健康維持に役立つ成分です。」

〇「健康維持、美容のためにお召し上がりください。」

〇「健康増進」の表現があるが「食品」と明記されている場合

ウ ③(形状)について

  • アンプル形状:医薬品と判断されます。
  • カプセル、丸剤、粉末、顆粒等:「食品」と明示されている場合には、原則として、医薬品とは判断されません。

エ ④(用法用量)について

  • 服用時期,服用間隔,服用量等の記載がある場合には,原則として医薬品的な用法用量とみなされます。但し、調理の目的のために定めているものを除きます。

2 まとめ

 いわゆる健康食品の表示については、たとえ本当に医薬品的な効果があったとしても、そのような表現を用いれば薬機法により一発で違法となります。また、医薬品的な効能ではなくても、置き換えによるカロリーオフ効果のダイエットなどを、合理的な根拠なく表示すると、景品表示法の優良誤認や健康増進法の虚偽誇大表示の問題が生じます。法令ごとに、規制の目的や観点は異なりますので、実は広告表現のチェックにおいては薬機法だけではなく様々な法律に配慮する必要があります。当事務所では、広告表現のチェックにおいて、薬機法だけでなく様々な法令を考慮した上でのご助言をしております

(参考:「広告表現チェック」原綜合法律事務所)

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※本記事は、下記の最終更新日時点の法令及び最新情報に基づくものです。

初回掲載日 令和4年9月6日

最終更新日 令和4年9月23日

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