【薬機法】について弁護士が解説 ~EC事業者のための法律講座(薬機法 総集編)~

1 薬機法とは

 「薬機法」は正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。その名の通り、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品(以下「医薬品等」といいます。)の品質、有効性、安全性を確保することによって、保健衛生の向上を図ることを目的とした法律です。

医薬品等の製造、表示、販売、流通、広告などについて細かく定めており、これらを扱う際には、必ずかかわってくる法律です。EC事業者にとっては、特に広告規制が重要です。具体的にどのようなものが規制の対象となっているのか、以下、見てみましょう。

 

2 薬機法上の定義と具体例

(1)医薬品

ア 法律上の定義(薬機法第2条1項)

一 日本薬局方に収められている物

二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)

三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

イ 具体例

・「医療用医薬品」(購入には医師の処方箋が必要な治療薬等)

・「一般用医薬品(OTC医薬品)」(ドラッグストアで薬剤師の助言を得て購入できる頭痛薬等)など

 

(2) 医薬部外品

ア 法律上の定義(薬機法第2条第2項)

一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの

イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止

ロ あせも、ただれ等の防止

ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛

二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの

三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

イ 具体例

・育毛剤、除毛剤、染毛剤、薬用入浴剤、コンタクトレンズ装着剤や手指消毒製品など

・ねずみやはえ等の防除目的で使用する殺そ剤や殺虫剤など

 

(3)化粧品

ア 法律上の定義(薬機法第2条第3項)

人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。

イ 具体例

・化粧水、乳液、ファンデーションや口紅などのコスメやスキンケア用品

・シャンプー、石けん、香水、歯磨き剤など

 

(4)医療機器

ア 法律上の定義(薬機法第2条第4項)

人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるもの

イ 具体例

・心電計、ペースメーカー、内視鏡

・CT、MRI等

 

(5)再生医療等製品

ア 法律上の定義(薬機法第2条第9項)

一 次に掲げる医療又は獣医療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの

イ 人又は動物の身体の構造又は機能の再建、修復又は形成

ロ 人又は動物の疾病の治療又は予防

二 人又は動物の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有させたもの

イ 具体例

・遺伝子発現治療製品、ヒト体細胞加工製品等

 

3 広告規制について

 

(1)薬機法における「広告」とは?

薬機法において「広告」として扱われて規制を受けるのは、次の3つの性質を有するものです。(参照:「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」)

①顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること

②特定医薬品等の商品名が明らかにされていること

③一般人が認知できる状態であること

 

ECサイト上に載せる商品の説明や紹介文などは、ほぼ全て含まると考えた方が良いでしょう。EC事業者としては、自社の扱う製品の素晴らしさをサイト上で記載して宣伝したいのは山々ですが、特に人体に影響を及ぼす効用や機能を持つ表現について、薬機法は厳しい規制を課していますので注意してください。以下、詳しく解説します。

 

(2)薬機法で禁止される広告

 EC事業者にとって、注意が必要なのは、薬機法第66条(虚偽誇大広告)と。第68条(未承認医薬品の広告)です、

 

ア 誇大広告等(第66条)

まず、虚偽・誇大広告が禁止されています。医師関係者の保証を匂わす記事も、たとえそれが真実であったとしても、虚偽・誇大広告とみなされてしまい違法となってしまいますので要注意です。

もう一つ、注意が必要な点として、誰が行った場合でも違反として処分の対象となります。メーカーや販売業者のみならず、メディアや広告関係者等に対しても規制が及びますので注意が必要です。

 

イ 承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止(第68条)

医薬品等としての認証を受けていないものについては、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告の実施が禁止されています。誰が行った場合でも違反として処分の対象となります。

この規定はとても重要です。例えば、健康食品などでも、広告表現等から、「医薬品」のように病気の治療や予防の目的を持つと理解されるものは、未承認医薬品として扱われ、これを広告することは違法となりますので、これらの製品を扱うEC事業者や広告会社にとっては、非常に注意が必要です。

(参考:「医薬品の範囲に関する基準の一部改正について」)

   実際に、広告代理店の従業員が逮捕されたケースもあります。

  (参考:ステラ漢方事件)

 

ウ 医薬品等適正広告基準

   上記の薬機法の規定を明確にするため、厚生労働省が「医薬品等適正広告基準」「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」が公表されており、以下の内容が定められております。

・医薬品等の広告に関する品位の保持

・名称の使用に関する制限

・効能効果等、用法用量等について、承認範囲を超える表現の禁止

・効能効果等又は安全性について保証する表現の禁止

・最大級表現の禁止

・即効性・持続性等について、医学薬学上認められる範囲を超える表現の禁止

・本来の効能効果等と認められない表現の禁止

・過量消費又は乱用助長を促す広告の禁止

・医療用医薬品等の広告の制限

・他社の製品の誹謗広告の制限

・医薬関係者等の推せん表現の禁止

・不快、迷惑、不安、恐怖等を与える広告の制限

 

(3)違反に対する制裁

   上記の薬機法の規制に違反した場合には、例えば、以下のような制裁が下される可能性があります。

 

ア 刑事罰

2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(薬機法66条又は68条の違反)第85条第4号、第5号。

 ※刑事訴訟手続の一環で逮捕・勾留されてしまう可能性もあります。

  (実例)

・「がんに効く」サプリ事件(逮捕)

    ・ステラ漢方事件(逮捕)

     ・タンポポ茶事件(逮捕)

     ・シンゲン・メディカル事件(逮捕)

     ・はげや事件(逮捕)

     ・日本ホールフーズ事件(書類送検)

 

イ 課徴金納付命令(行政処分)薬機法75条の5の2

66条1項(虚偽又は誇大広告)違反については、課徴金が課せられることがあります。課徴金額は原則として、違反を行っていた期間中における対象商品の売上額×4.5%です。課徴金額が225万円(対象品目の売上げ5000万円)未満の場合は、課徴金納付命令は行われません。

参考「:「課徴金制度の導入について」

 

ウ 措置命令等(行政処分)薬機法72条の5

   第66条1項(虚偽又は誇大広告)又は第68条(未承認医薬品の広告)の違反について、再発防止、公示、危険防止措置命令等の行政処分が課せられることがあります。

 

(4)弁護士からの一言(広告規制について)

商品の広告表示において注意しなければならない法律は、薬機法の他にも、景品表示法、健康増進法、特定商取引法などがありますが、それらと比べて薬機法の特徴は、“真実であったとしても絶対に使ってはならない“表現があることです。さらに、違反は犯罪ですから逮捕されたり前科がついたりする可能性もありペナルティも絶大です。万が一、自社で予定している広告表現が薬機法違反にならないかの判断に不安がある場合には、早めに弁護士にチェック等をご依頼ください。(参考:「広告表現チェック」原綜合法律事務所)

 

4 化粧品と薬機法

 

(1)薬機法における化粧品

化粧品は、広告表現により、製品の売り上げが決まると言っても過言ではありません。そのため、事業者としては少しでもユーザーの心に刺さる表現を行いたいのは山々なのですが、行き過ぎが生じないよう薬機法はこれを厳しく制約しています。事業者としては、薬機法等が定めている広告表現の限界をしっかりと理解し見極める必要があります。

 

(2)一般化粧品と薬用化粧品

  化粧品は、使い方が同じでも薬機法によって「化粧品」(一般化粧品)と「医薬部外品」(薬用化粧品)に分類されます。

「化粧品」(一般化粧品)は肌の保湿や、清浄など、製品全体としてその効果が期待されている一方、「医薬部外品」としての厚生労働大臣の承認が必要な薬用化粧品は化粧品としての期待効果に加えて、肌あれ・にきびを防ぐ、美白、デオドラントなどの効用を持つ有効成分が配合されています。

 

ア 一般化粧品(「化粧品」)

一般化粧品で表示できる効能効果は、以下の56種類に限定されています。

これら以外の効能効果を表示すれば、たとえ事実であったとしても違法(薬機法66条1項の虚偽・誇大広告)となってしまい、刑事罰(逮捕の可能性もあります)、課徴金等の行政処分等を受けるリスクが生じます。

(参考:「化粧品の効能の範囲の改正ついて」)

 

【一般化粧品で表示できる効能効果(対象部位別)】

対象部位

表示できる効能効果

頭皮、毛髪

 

頭皮、毛髪を清浄にする。香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。頭皮、毛髪をすこやかに保つ。毛髪にはり、こしを与える。頭皮、毛髪にうるおいを与える。頭皮、毛髪のうるおいを保つ。毛髪をしなやかにする。クシどおりをよくする。毛髪のつやを保つ。毛髪につやを与える。フケ、カユミがとれる。フケ、カユミを抑える。毛髪の水分、油分を補い保つ。裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。髪型を整え、保持する。毛髪の帯電を防止する

皮膚

(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。肌を整える。肌のキメを整える。皮膚をすこやかに保つ。肌荒れを防ぐ。肌をひきしめる。皮膚にうるおいを与える。皮膚の水分、油分を補い保つ。皮膚の柔軟性を保つ。皮膚を保護する。皮膚の乾燥を防ぐ。肌を柔らげる。肌にはりを与える。肌にツヤを与える。肌を滑らかにする。ひげを剃りやすくする。ひげそり後の肌を整える。あせもを防ぐ(打粉)。日やけを防ぐ。日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ

匂い

芳香を与える。

爪を保護する。爪をすこやかに保つ。爪にうるおいを与える

口唇の荒れを防ぐ。口唇のキメを整える。口唇にうるおいを与える。口唇をすこやかにする。口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。口唇を滑らかにする

口中

ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。口中を浄化する(歯みがき類)。口臭を防ぐ(歯みがき類)。歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。 

皮膚

(注意点有)

乾燥による小ジワを目立たなくする。

※表示する際には、「化粧品の効能の範囲の改正に係る取扱いについて」にあるように、以下の通り、条件が課されています。

・     製造販売業者の責任において、日本香粧品学会の「化粧品機能評価法ガイドライン」の「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に基づく試験また同等以上の試験を行い、効果に見合うことを確認する。

・     消費者等からの問合せに対応できる環境を整える。また、効能にかかわる根拠を求められた場合には、試験結果や評価資料などを提示して根拠を説明する。

・     表示・広告の際は、日本化粧品工業連合会が定めた「化粧品等の適正広告ガイドライン」に基づき、適正な広告を行うよう十分、配慮すること。

注1)例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。

 注2)「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。

 注3)( )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するもので ある。

 

イ 薬用化粧品(医薬部外品)

上記の一般医薬品としての効能。効果に加えて下記の薬用効果が表現できます。

(参考:「医薬品等適正広告基準」「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」)

 

【薬用化粧品(医薬部外品)で表示可能な効能・効果】

種類

効能・効果

1.シャンプー

ふけ・かゆみを防ぐ。毛髪。頭皮の汗臭を防ぐ。毛髪・頭皮を清浄にする。(毛髪・頭皮をすこやかに保つ。毛髪をしなやかにする。 の二者択一)

2.リンス

ふけ・かゆみを防ぐ。毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。毛髪の水分・脂肪を補い保つ。裂毛・切毛・枝毛を防ぐ。(毛髪・頭皮をすこやかに保つ。毛髪をしなやかにする。 の二者択一)

3.化粧水

肌あれ。あれ性。あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ。にきびを防ぐ。油性肌。かみそりまけを防ぐ。日やけによるしみ・そばかすを防ぐ(注1)。日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える

4.クリーム、乳液、ハンドクリーム、化粧用油

肌あれ。あれ性。あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。油性肌。かみそりまけを防ぐ。日やけによるしみ・そばかすを防ぐ(注1)。日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える。皮膚を保護する。皮膚の乾燥を防ぐ。

5.ひげそり用剤

かみそりまけを防ぐ。皮膚を保護し、ひげをそりやすくする。

6.日やけ止め剤

日やけ・雪やけによる肌あれを防ぐ。日やけ・雪やけを防ぐ。日やけによるしみ・そばかすを防ぐ(注1)。皮膚を保護する。

7.パック

肌あれ。あれ性。にきびを防ぐ。油性肌。日やけによるしみ・そばかすを防ぐ(注1)。日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。肌をなめらかにする。皮膚を清浄にする。

8.薬用石けん(洗顔料を含む)

<殺菌剤主剤>(消炎剤主剤をあわせて配合するものを含む)皮膚の清浄・殺菌・消毒。体臭・汗臭及びにきびを防ぐ。

<消炎剤主剤のもの>皮膚の清浄、にきび・かみそりまけ及び肌あれを防ぐ。

(注1)作用機序によっては、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ。」も認められる。

(注2)上記にかかわらず、化粧品の効能の範囲のみを標ぼうするものは、医薬部外品としては認められない。

 

(3)弁護士からの一言(化粧品について)

 上記の通り、化粧品に関して広告で使用できる表現は非常に限られています。競合他社も条件は一緒ですので、如何にして許された範囲内で魅力的な表現を行うかという点が勝負どころです。

 当事務所では、広告表現のチェックにおいて、単に適法か違法かを伝えるだけでなく、どうすれば、表現したい内容を適法な表現に言い換えることができるか、という点に踏み込んでご助言をしております

(参考:「広告表現チェック」原綜合法律事務所)

 

 

5 健康食品と薬機法

 

(1) 薬機法における健康食品の扱い

薬機法で規制される商品は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の5種です。そのため、一般に健康食品といわれる製品はこれらに含まれず直接薬機法で規制を受けるものではありません。本来一般的な食品としての扱われるべきものです。

しかしながら、一般的な食品も医薬品的な効用や用法を表示するなどの事情があると、薬機法上は「医薬品」としての扱いを受けることとなります。しかも、このような場合に医薬品としての承認を得ていることは稀でしょうから、未承認医薬品ということとなり、薬機法88条(未承認医薬品の広告の禁止)に違反することとなってしまいます(2年以下の懲役または200万円以下の罰金)

そのため、EC事業者の方がサイト上で何らの承認をも受けていない健康食品について表示する際には、その表示が医薬品的な表示とならないように十分に注意をする必要があります。

 

(2)「医薬品」の判定

   それでは、どのような場合に、健康食品が「医薬品」として扱われて薬機法の規制の対象になってしまうのでしょうか。昭和46年6月1日に厚生省より出された「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(通称「46通知」)により、「医薬品」に該当するか否かの判断は、以下の要素のより行われています。

  • 成分本質:医薬品専用の成分を指定しているか
  • 効能効果:身体の変化を表現しているか
  • 形  状:医薬品と思わしき形状であるか
  • 用法用量:決まった用法用量が明示されているか

 

まず、①医薬品とされる成分本質が配合または含有されている場合は原則として医薬品とする。医薬品とされる成分本質が配合または含有されていない場合であっても、②効能効果、③形状、④用法用量が医薬品的である場合は原則として医薬品とみなされる、という判断の流れです。

 

以下、各要素について詳しく見ましょう。

 

(3)各要素について

ア ①(成分本質)について

   厚生労働省が公表している医薬品リストに掲載されている成分本質(原材料)を1種でも原材料として使用したものは原則として「医薬品」と判断されます。

   一方、非医薬品リストに掲載されている成分本質(原材料)は、薬機法上は原材料として使用した場合、それだけで医薬品に該当すると判断されません。

 

イ ②(効能効果)について

  (ア)判断する上での対象となる表示方法は以下の通りです。

(参照:東京都福祉保健局「医薬品的な効能効果について」)

・製品の容器、包装、添付文書などの表示物

・製品のチラシ、パンフレット等

・テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットなどによる製品の広告

・小冊子、書籍

・会員誌、情報誌

・新聞、雑誌などの切り抜き、書籍や学術論文等の抜粋

・代理店、販売店に教育用と称して配布される商品説明(関連)資料

・使用経験者の感謝文、体験談集

・店内および車内等におけるつり広告

・店頭、訪問先、説明会、相談会、キャッチセールス等においてスライド、ビデオ等又は口頭で行われる演述等

・その他特定商品の販売に関連して利用される前記に準ずるもの

(イ)医薬品的な効能効果とされる表現

ⅰ 病気の治療又は予防を目的とする表現

「ガンに効く」「高血圧の改善」「生活習慣病の予防」「動脈硬化を防ぐ」「緑内障の治療に」など

ⅱ 体の機能の一般的増強、増進を目的とする表現

     「疲労回復」「体力増強」「精力回復」「老化防止」「学力向上」「新陳代謝を高める」「血液を浄化する」「風邪を引きにくい体にする」「肝機能向上」「細胞の活性化」

ⅲ 医薬品的効果を暗示する表現

      「体質改善」「血液をサラサラにすると言われている~~を主原料にしています。」「~~(原料名)は、日本○○学会でガンに効果があるということが発表されました」「便秘気味の方に」「摂取後、一時的に下痢や吹き出物などの反応が出ることがありますが、体内浄化のための初期症状ですのでそのまま摂取を続けてください。」「食品なので医薬品のような速効性はありませんが、じわじわと効果があらわれます。」

      ⅳ「栄養補給」についてはケースバイケース

〇「働き盛りの方の栄養補給に」、「発育時の栄養補給に」(理由:病的な健康状態に関係のない対象年齢等は可)

×「病中病後の体力低下時の栄養補給に」「~~(栄養成分)」は、体内で動脈  硬化の防止に役立っています。

ⅴ「健康維持」、「美容」は医薬品的な効能効果に該当しない

〇「~~(栄養成分)は健康維持に役立つ成分です。」

〇「健康維持、美容のためにお召し上がりください。」

〇「健康増進」の表現があるが「食品」と明記されている場合

 

ウ ③(形状)について

・アンプル形状:医薬品と判断されます。

・カプセル、丸剤、粉末、顆粒等:「食品」と明示されている場合には、原則として、医薬品とは判断されません。

 

エ ④(用法用量)について

・服用時期,服用間隔,服用量等の記載がある場合には,原則として医薬品的な用法用量とみなされます。但し、調理の目的のために定めているものを除きます。

 

(4)弁護士からの一言(健康食品について)

 いわゆる健康食品の表示については、たとえ本当に医薬品的な効果があったとしても、そのような表現を用いれば薬機法により一発で違法となります。また、医薬品的な効能ではなくても、置き換えによるカロリーオフ効果のダイエットなどを、合理的な根拠なく表示すると、景品表示法の優良誤認や健康増進法の虚偽誇大表示の問題が生じます。法令ごとに、規制の目的や観点は異なりますので、実は広告表現のチェックにおいては薬機法だけではなく様々な法律に配慮する必要があります。当事務所では、広告表現のチェックにおいて、薬機法だけでなく様々な法令を考慮した上でのご助言をしております

(参考:「広告表現チェック」原綜合法律事務所)

 

6 美容・健康関連機器と薬機法

 

(1)薬機法における美容・健康関連機器の扱い

美容・健康関連とは、一般的に温冷熱・振動・電波・光などを利用して、主に皮膚を清潔にし、美肌を整え、美しい状態を維持する美容目的で使用されている機器や筋肉運動機器を指して。美容に対する行き来の高まりに伴い、家庭でも手軽にスキンケア等が行えるこれらの製品はEC通販においても売り上げを伸ばしている商品です。

美容・医療機器も健康食品と同様に直接薬機法で規制されるのではありませんが、医療機器類似の用法・効果を表示するなどの事情があると、薬機法88条(未承認医療機器の広告の禁止)に違反することとなってしまいます。

それでは、EC事業者はサイト上で美顔器などの美容機器について広告表示をする際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?

 

(2)事実であれば表示できる範囲

   一般社団法人日本ホームヘルス機器協会が定めた自主基準である「家庭向け美容・健康関連機器適正広告表示ガイドⅣ平成30年度版」によると、基本的には一般化粧品に認められている55項目の範囲であれば表示が可能とされています。

  (参考)「化粧品の効能の範囲の改正について」厚生労働省医薬食品局長

具体的には、一般化粧品の項目(4(2)ア)で述べたのと同内容です。

 

(3)例外

   一般化粧品においては、「乾燥による小ジワを目立たなくする。」という効能の表示も認められていますが、日本香粧品学会の「化粧品機能評価ガイドライン」に基づく試験等を行って、その効能を確認した場合に限るという条件が付されており、美容機器は、この試験ができないなどの理由で除外されています。

 

7 まとめ

 上記の通り、EC事業者にとって商品の広告表現においては、薬機法をはじめとする様々な法律をクリアする必要があります。本来であれば、ある程度の知識を持っていてチェックができる法務スタッフを社内に育成・確保して、自社の内部で判断できる仕組みを整えることが望ましいことは言うまでもありません。しかしながら、そのようなリソースを確保することが難しい場合には、この分野に詳しい弁護士と顧問契約等を結び、必要に応じて気楽にチェックを依頼できる仕組みを整えておくことが費用対効果の面でも有益です。

 

 

★当事務所(原綜合法律事務所)の顧問契約(月額33,000円~)では、チャットやZOOMをフル活用し、いつでも気軽に相談できる距離感のないサポートを全国のEC事業者の方々にご提供しております。特に、薬機法に関しては以下のサービスがご好評を頂いております。

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※本記事は、下記の最終更新日時点の法令及び最新情報に基づくものです。

初回掲載日 令和4年9月23日

最終更新日 令和4年9月23日

※本記事は、以下の連載記事を統合した総集編です。

  ・薬機法の広告規制について弁護士が解説

~EC事業者のための法律講座(薬機法①)~

  ・化粧品に関しての薬機法について弁護士が解説

~EC事業者のための法律講座(薬機法②)~

  ・健康食品に関しての薬機法について弁護士が解説

~EC事業者のための法律講座(薬機法③)~

  ・健康食品に関する薬機法について弁護士が解説

~EC事業者のための法律講座(薬機法④)~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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