執筆者:弁護士 原 隆(はら たかし) 原総合法律事務所 代表弁護士 |
Contents
1 有利誤認表示とは?
今回は、景品表示法の規制のうち、不当表示規制の中でも前回の優良誤認表示に続いて有利誤認表示(景品表示法第5条2号)について解説します。
商品・サービスの取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝したりする行為が有利誤認表示に該当します。
(具体例)
- 当選者の100人だけが割安料金で契約できる旨表示していたが、実際には、応募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていた
- 「他社商品の2倍の内容量です」と表示していたが、実際には、他社と同程度の内容量にすぎなかった。
- 運送業者が、基本価格を記載せずに、「今なら半額!」と表示したが、実は50%割引とは認められない料金で仕事を請け負っていた。
- 歯科矯正で、実際には、別途、矯正装置の費用が必要であるにもかかわらず、あたかも、初診料や検査診断料などとして記載された「○○円」だけを支払えば歯列矯正のサービスを利用できるかのように表示。
(参考:「有利誤認とは」消費者庁HP)
2 二重価格表示
(1)二重表示価格とは?
有利誤認表示の代表的なものとして、不当な「二重価格表示」があります。二重価格表示とは、「通常価格□□円のところ、本日限り○○円!」、というように販売価格よりも高い他の価格を参考として併記して表示するものをいいます。
このような表示をすることも、その内容が適正な場合は問題ありませんが、不正確な表示をすることにより、消費者に販売価格が安いと誤認させるような表示は、景品表示法で禁止されている不当表示に該当し違法とされます。
ここでの比較対象価格についての判断は、「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」(公正取引委員会作成。現在消費者庁が継承)に詳細されています。具体的には、以下の二重価格表示が不当表示とされるおそれがあります。
(2)同一でない商品の価格を比較して表示する場合
似ている製品であっても銘柄や品質、規格、性能などが異なれば、が違ったりするものでは価格が異なるのは本来当然です。それでも、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与えてしまうおそれがありますので規制の対象となり得ます。
(3)比較対象に用いる価格が実際と異なったりあいまいな場合
ア 過去の価格を表示する場合
「当店通常価格□□円のところ期間限定○○円」のような表示をする場合のことです。このような過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示について、景品表示法は「最近相当期間にわたって販売されていた」実績のある価格である場合にのみ、比較対照価格として表示することを認めています。つまり、実際に販売されていた価格であることが大前提として必要です。
問題は、どのような価格が「最近相当期間にわたって販売されていた」価格といえるかですが、以下の要件を満たす場合に認められると解釈運用されています。
① 原則として、二重価格表示日の直前8週間(販売開始から8週間未満の場合にはその期間)において半分以上販売されていた価格であること ② その価格で販売されていた期間が2週間以上あること ③ 二重価格表示開始日より2週間前以内にその価格で販売されていること |
イ 将来の価格を表示する場合
『今なら特別価格○○円。□月□日以降は△△円になります』のように、セール終了後の販売価格を表示する二重価格表示をする場合も注意が必要です。
このような表示は、期間経過後に、将来の販売価格として表示した価格で実際に販売することが確実な場合でなければ不当表示に該当するおそれがあります。また、実際に販売するとしても、それがごく短期間にすぎない場合も不当表示に該当するおそれがあります。
ウ 希望小売価格を表示する場合
「メーカー希望小売価格□□円、特別価格○○円」という表示も注意が必要です。
「希望小売価格」として表示する価格は、それを小売販売する者が決めて広く示されている価格であることが必要です。小売業者自身のプライベートブランド商品や、D2Cの場合にはNGですので注意しましょう。
エ 競合他社の価格を表示する場合
消費者が同一の商品について代替的に購入し得る事業者の直近の販売価格とはいえない価格を比較対照価格に用いる場合には、不当表示に該当するおそれがあります。直近の価格を十分に調査することが必要です。
(参考:「二重価格表示」消費者庁HP)
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※本記事は、下記の最終更新日時点の法令及び最新情報に基づくものです。
初回掲載日 令和4年9月6日
最終更新日 令和4年9月23日