【弁護士が解説】EC事業者のための法律講座(基本編) 景品表示法2 ~優良誤認表示の禁止(概説)~

執筆者:弁護士 原 隆(はら たかし)

原総合法律事務所 代表弁護士

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1 優良誤認表示の禁止とは?

  今回は、景品表示法の規制のうち、不当表示規制の中でも優良誤認表示について解説します。
優良誤認表示とは、商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝したりすることをいいます。
これは、景表法第5条1項により禁止されています。例えば、以下のようなものが典型例です。

(具体例)

  • 中古自動車販売において、走行距離を3万kmと表示したが、実は10万km以上走行した中古自動車のメーターを巻き戻したものだった。
  • 国産有名ブランド牛の肉であるかのように表示して食肉を販売していたが、実はブランド牛ではない国産牛肉だった。
  • 医療保険を販売する際に「入院1日目から入院給付金をお支払い」と表示したが、入院後に診断が確定した場合、その日からの給付金しか支払われないシステムだった。
  • アクセサラーで天然ダイヤを使用したネックレスのように表示したが、使われているのはすべて人造ダイヤだった。
  • ダイエット食品で、利用者の体験談やアンケートを用いて、食事制限をすることなく痩せられるかのように表示していたが、実際には、これらは捏造されたものであった。
  • 害虫駆除機で、超音波や電磁波によって、ゴキブリやネズミを家から追い出すと表示したが、実際にはそのような駆除効果は認められなかった。

(参考:「優良誤認とは」消費者庁HP

2 不実証広告規制

消費者庁長官は、優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合には、期間を定めて(通常は15日以内です。)、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合には、当該表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(第7条第2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されます(第8条第3項)。

つまり、

(参考:「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針 ―不実証広告規制に関する指針―

3 「合理的な根拠」

 それでは、どのような資料が提出できれば表示の裏付けとなる「合理的根拠」として認められるのでしょうか?
それには、次の2つの要件を満たす必要があります。

(1)提出資料が客観的に実証された内容のものであること。

 具体的には、次のア・イのいずれかに該当する客観的に実証された内容のものである必要があります。

ア 試験・調査によって得られた結果

試験・調査の方法は、原則として、表示された商品・サービスの効果、性能に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法により実施する必要があります。

(具体例)

  •  日用雑貨品の抗菌効果試験について、JIS(日本工業規格)に規定する試験方法によって実施したもの。
  •  自動車の燃費効率試験の実施方法について、10・15モード法によって実施したもの。
  •  繊維製品の防炎性能試験について、消防法に基づき指定を受けた検査機関によって実施したもの。

このような方法が存在せず、消費者の体験談やモニターの意見等については、無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し、作為が生じないように考慮して行うなど、統計的に客観性が十分に確保されている必要があります。

イ 専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献

専門家等による見解又は学術文献を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合は、専門家等が客観的に評価した見解又は学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められている必要があります。

(2)表示された効能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること

4 EC事業者へのアドバイス
 注意しなければならないのは、このような合理的根拠を示す資料は、提出を求められてから原則15日以内に提出しなければならない点です。もしも、何らの資料も準備していない状態であれば、上記に記載したような資料を15日以内にゼロから準備することは通常不可能でしょうから、ほぼ確実に何らかの処分を受けることとなってしまいます。
 EC事業者としては、販売する商品の性能を少しでもよく見えるように紹介したいのは山々ですが、このような資料を提出しなければならなくなった場面で、困ってしまうような表示をすることは予め避けるべきです。
一方、製品の発売前から入念に準備し、十分な合理的根拠を示せる資料を揃えている場合には、他社が謳うことができないような表示を堂々とすることができるのですから、大きなアドバンテージになり、一人勝ちできる可能性もあります。この際、大切なのは、どのような資料が準備されていれば、どのような表示ができるのか、ということを適切に見極めることです。

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※本記事は、下記の最終更新日時点の法令及び最新情報に基づくものです。

初回掲載日 令和4年9月6日

最終更新日 令和4年9月23日

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