【弁護士が解説】EC事業者のための法律講座(基本編) 特定商取引法3 ~ECにおける返品ルール② 「ノークレーム・ノーリターン」特約~

執筆者:弁護士 原 隆(はら たかし)

原総合法律事務所 代表弁護士

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1 「ノークレーム・ノーリターン」特約とは?

 インターネットオークション等のユーザー間プラットフォームでの取引において、売主が、「ノークレーム・ノーリターンでお願いします。」等と一切クレームやリターン(解除、返品等)を拒否する旨を記載して出品することがあります。買主も、このようは記載があることを理解して承知の上で購入を決意します。これがいわゆる「ノークレーム・ノーリターン」特約と呼ばれるものです。

2 「ノークレーム・ノーリターン」特約の有効性

 まず、本来、売買契約で商品にキズや数量が足りないなどの欠陥(契約不適合といいます。)があった場合には、原則として、買主は、売主に対して目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しなどを請求することができます(民法562条1項)。代金の減額請求や解除できる場合もあります(民法563条、564条)
 ただ、このような買主の権利は、売主と買主の双方が予め合意すれば事前に放棄することができます。「ノークレーム・ノーリターン」特約は、この合意と解釈されますので、原則として有効で、買主は、届いた商品に問題があっても、売主に対してもはや何も請求できないこととなります。

3 「ノークレーム・ノーリターン」特約が無効になる場合

 しかしながら、このような特約も常に有効とは限りません。以下のような場合には効力が否定される場合があります。

(1)売主が商品に欠陥があることを知りながら告げなかったとき

 売主が出品物の全部又は一部が他人に属すること、数量が不足していること、出品物に欠陥(例えば商品説明には記載されていなかったキズや汚れなど)があること等を自ら知っているにもかかわらず、これを買主に告げないで取引した場合にまで、売主に免責を認めるものではありません。この場合、売主は責任を免れることができません(民法572条)。また、具体的事情により錯誤や詐欺による取消し(民法第95条第1項・第2項、第96条第1項)が認められる可能性もあります。

(2)売主が事業主で、買主が消費者の場合

ア 免責の効力

 売主が事業者で買主が消費者の場合、売主の責任を免除する特約としての「ノークレーム・ノーリターン」は、損害賠償義務の全部を免除し、かつ解除権を排除する特約であるとして、消費者契約法第8条第1項第1号及び第8条の2により無効となる場合があります。

イ 法定返品権

 前回解説しました特商法上の法定返品権と返品特約の表示の話は、インターネットオークションなどのユーザー間プラットフォーム上での取引においても、売主が事業者の場合には当てはまります。買主は原則として商品の引渡しを受けてから8日間は商品に欠陥がなくても自由に返品できるのです。
この場合、「ノークレーム・ノーリターン」という表記は、法定返品権を認めない旨の返品特約の表示としては有効です。買主は、商品に欠陥がない場合に自由に返品することはできなくなる、という限度で意味を持つこととなります。

 

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※本記事は、下記の最終更新日時点の法令及び最新情報に基づくものです。

初回掲載日 令和4年9月6日

最終更新日 令和4年9月23日

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