化粧品に関しての薬機法について弁護士が解説 ~EC事業者のための法律講座(薬機法②)~

執筆者:弁護士 原 隆(はら たかし)

原総合法律事務所 代表弁護士

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 化粧品やコスメなどの美容製品や健康食品を扱われるEC事業者の方は、しばしば「『薬機法』に気を付けないといけない」、という話は耳にされると思います。EC事業者にとって薬機法は特に商品の表示や広告の方法で気を付けなければならない法律です。違反すると刑事事件になって逮捕されてしまったり、巨額の課徴金を課せられたりなど大変なことになってしまう場合があります。今回は、特に化粧品について解説します。

1 化粧品と薬機法

(1)薬機法における化粧品

化粧品は、広告表現により、製品の売り上げが決まると言っても過言ではありません。そのため、事業者としては少しでもユーザーの心に刺さる表現を行いたいのは山々なのですが、行き過ぎが生じないよう薬機法はこれを厳しく制約しています。事業者としては、薬機法等が定めている広告表現の限界をしっかりと理解し見極める必要があります。

(2)一般化粧品と薬用化粧品

  化粧品は、使い方が同じでも薬機法によって「化粧品」(一般化粧品)と「医薬部外品」(薬用化粧品)に分類されます。

「化粧品」(一般化粧品)は肌の保湿や、清浄など、製品全体としてその効果が期待されている一方、「医薬部外品」としての厚生労働大臣の承認が必要な薬用化粧品は化粧品としての期待効果に加えて、肌あれ・にきびを防ぐ、美白、デオドラントなどの効用を持つ有効成分が配合されています。

ア 一般化粧品(「化粧品」)

一般化粧品で表示できる効能効果は、以下の56種類に限定されています。

 これら以外の効能効果を表示すれば、たとえ事実であったとしても違法 (薬機法66条1項の虚偽・誇大広告)となってしまい、刑事罰(逮捕の可能性もあります)、課徴金等の行政処分等を受けるリスクが生じます。

(参考:「化粧品の効能の範囲の改正ついて」)

 

【一般化粧品で表示できる効能効果(対象部位別)】

対象部位

表示できる効能効果

頭皮、毛髪

 

頭皮、毛髪を清浄にする。香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。頭皮、毛髪をすこやかに保つ。毛髪にはり、こしを与える。頭皮、毛髪にうるおいを与える。頭皮、毛髪のうるおいを保つ。毛髪をしなやかにする。クシどおりをよくする。毛髪のつやを保つ。毛髪につやを与える。フケ、カユミがとれる。フケ、カユミを抑える。毛髪の水分、油分を補い保つ。裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。髪型を整え、保持する。毛髪の帯電を防止する

皮膚

(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。肌を整える。肌のキメを整える。皮膚をすこやかに保つ。肌荒れを防ぐ。肌をひきしめる。皮膚にうるおいを与える。皮膚の水分、油分を補い保つ。皮膚の柔軟性を保つ。皮膚を保護する。皮膚の乾燥を防ぐ。肌を柔らげる。肌にはりを与える。肌にツヤを与える。肌を滑らかにする。ひげを剃りやすくする。ひげそり後の肌を整える。あせもを防ぐ(打粉)。日やけを防ぐ。日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ

匂い

芳香を与える。

爪を保護する。爪をすこやかに保つ。爪にうるおいを与える

口唇の荒れを防ぐ。口唇のキメを整える。口唇にうるおいを与える。口唇をすこやかにする。口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。口唇を滑らかにする

口中

ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。口中を浄化する(歯みがき類)。口臭を防ぐ(歯みがき類)。歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。 

皮膚

(注意点有)

乾燥による小ジワを目立たなくする。

※表示する際には、「化粧品の効能の範囲の改正に係る取扱いについて」にあるように、以下の通り、条件が課されています。

・     製造販売業者の責任において、日本香粧品学会の「化粧品機能評価法ガイドライン」の「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に基づく試験また同等以上の試験を行い、効果に見合うことを確認する。

・     消費者等からの問合せに対応できる環境を整える。また、効能にかかわる根拠を求められた場合には、試験結果や評価資料などを提示して根拠を説明する。

・     表示・広告の際は、日本化粧品工業連合会が定めた「化粧品等の適正広告ガイドライン」に基づき、適正な広告を行うよう十分、配慮すること。

注1)例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。

 注2)「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。

 注3)( )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するもので ある。

 

イ 薬用化粧品(医薬部外品)

上記の一般医薬品としての効能。効果に加えて下記の薬用効果が表現できます。

(参考:「医薬品等適正広告基準」「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」)

 

【薬用化粧品(医薬部外品)で表示可能な効能・効果】

種類

効能・効果

1.シャンプー

ふけ・かゆみを防ぐ。毛髪。頭皮の汗臭を防ぐ。毛髪・頭皮を清浄にする。(毛髪・頭皮をすこやかに保つ。毛髪をしなやかにする。 の二者択一)

2.リンス

ふけ・かゆみを防ぐ。毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。毛髪の水分・脂肪を補い保つ。裂毛・切毛・枝毛を防ぐ。(毛髪・頭皮をすこやかに保つ。毛髪をしなやかにする。 の二者択一)

3.化粧水

肌あれ。あれ性。あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ。にきびを防ぐ。油性肌。かみそりまけを防ぐ。日やけによるしみ・そばかすを防ぐ(注1)。日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える

4.クリーム、乳液、ハンドクリーム、化粧用油

肌あれ。あれ性。あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。油性肌。かみそりまけを防ぐ。日やけによるしみ・そばかすを防ぐ(注1)。日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。肌をひきしめる。肌を清浄にする。肌を整える。皮膚をすこやかに保つ。皮膚にうるおいを与える。皮膚を保護する。皮膚の乾燥を防ぐ。

5.ひげそり用剤

かみそりまけを防ぐ。皮膚を保護し、ひげをそりやすくする。

6.日やけ止め剤

日やけ・雪やけによる肌あれを防ぐ。日やけ・雪やけを防ぐ。日やけによるしみ・そばかすを防ぐ(注1)。皮膚を保護する。

7.パック

肌あれ。あれ性。にきびを防ぐ。油性肌。日やけによるしみ・そばかすを防ぐ(注1)。日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。肌をなめらかにする。皮膚を清浄にする。

8.薬用石けん(洗顔料を含む)

<殺菌剤主剤>(消炎剤主剤をあわせて配合するものを含む)皮膚の清浄・殺菌・消毒。体臭・汗臭及びにきびを防ぐ。

<消炎剤主剤のもの>皮膚の清浄、にきび・かみそりまけ及び肌あれを防ぐ。

(注1)作用機序によっては、「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ。」も認められる。

(注2)上記にかかわらず、化粧品の効能の範囲のみを標ぼうするものは、医薬部外品としては認められない。

2 まとめ

 上記の通り、化粧品に関して広告で使用できる表現は非常に限られています。競合他社も条件は一緒ですので、如何にして許された範囲内で魅力的な表現を行うかという点が勝負どころです。
当事務所では、広告表現のチェックにおいて、単に適法か違法かを伝えるだけでなく、どうすれば、表現したい内容を適法な表現に言い換えることができるか、という点に踏み込んでご助言をしております
(参考:「広告表現チェック」原綜合法律事務所)

★当事務所(原綜合法律事務所)の顧問契約(月額33,000円~)では、チャットやZOOMをフル活用し、いつでも気軽に相談できる距離感のないサポートを全国のEC事業者の方々にご提供しております。特に、薬機法に関しては以下のサービスがご好評を頂いております。

※サイト上などの広告表現について、薬機法を始めとする様々な法令を考慮に入れてチェックします。)

※貴社が計画しているビジネスモデル自体に違法な点がないかのチェックを致します。

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※本記事は、下記の最終更新日時点の法令及び最新情報に基づくものです。

初回掲載日 令和4年9月5日

最終更新日 令和4年9月23日

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