【弁護士が解説】EC事業者のための法律講座(基本編) 景品表示法4 ~打消し表示~

執筆者:弁護士 原 隆(はら たかし)

原総合法律事務所 代表弁護士

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1 強調表示と打消し表示

 EC事業者が自信をもって販売する商品を一般消費者に訴求するために、断定的表現や目立つ表現(例えば「受講者全員合格!」「絶対痩せる」「業界No.1!」、「最大〇時間効果が持続!!」、「月額〇円のみ!」)を使って、内容や取引条件を強調した表示を行うことがあります。これは、一般的に「強調表示」と呼ばれます。

これらが合理的根拠ある証拠に支えられた真実であれば問題ないのですが、そのままの表示では過大な表現で不当表示となってしまう場合もあります。そこで、このような強調表示に制限を掛けて表示の内容を真実に合致させるために用いられるのが「打消し表示」と呼ばれるものです。例えば、「結果には個人差があります」「一部例外があります」といったものです。

2 打消し表示の問題点

販売者側の本音を言えば、このような「打消し表示」は可能な限り目立たせたくないこともあります。しかしながら、これらの表示がわかりにくいものであれば、消費者は気づくことや内容を理解することができず、強調表示をそのまま信用してしまいます。
このように、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できないような場合、そもそも打消し表示自体が存在しないものとして、行われた強調表示のみを基準に不当表示にあたるか否かを判断されてしまうこととなります。
消費者庁の「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点 (実態調査報告書のまとめ)」に、留意事項がまとめられていますので、考え方をご紹介します。

3 打消し表示の表示方法について

(1)基本的な考え方

 打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できるように適切な表示方法で表示されているか否かについては、打消し表示の文字の大きさ、配置箇所、色等から総合的に判断されるところ、この判断に当たっては、全ての媒体に共通する要素とともに、各媒体で特徴的な要素についても留意する必要があります。

(2)全媒体共通

ア 打消し表示の文字

一般消費者が実際に目にする状況において適切と考えられる文字の大きさで表示する必要があります。また、強調表示の文字との大きさや距離関係のバランスが重要となります。

イ 打消し表示と背景の区別

背景の色と打消し表示の文字の色との組合せや、打消し表示の背景の模様等が勘案されます。

(3)動画広告

ア 打消し表示が含まれる画面の表示時間

 一般に表示時間が短いほど、また、文字数が多いほど、一般消費者は、当該打消し表示を正確に認識することが難しくなります。これを踏まえて、打消し表示が含まれる画面の表示時間の長さだけでなく、画面内に含まれている強調表示や打消し表示の文字数等も勘案されます。

イ 強調表示と打消し表示が別の画面に表示されるか

 打消し表示が強調表示とは別の画面に表示されている場合、一般消費者が打消し表示に気付かなかったり、打消し表示であると認識できないときがあります。

ウ 音声による表示の方法

 例えば、強調表示を文字および音声で表示する場合に、打消し表示を文字のみで行う場合には、一般注意者は、当該打消し表示に注意が向かず、正確に認識することが難しいといえます。

エ 複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場するか

  当該複数のものが登場する場合には、動画中の情報量が多く、一般消費者としては、1回見ただけで全ての打消し表示を正確に認識することは難しいという点も勘案されます。

(4)Web広告(PC)

 強調表示と打消し表示が1スクロール以上離れた場所に表示されている場合、一般に人が認識できないおそれがあります。その場合、打消し表示を一般消費者が認識できるか否かを判断する際は、①強調表示の前後の文脈や強調表示の近くにある記号等から一般消費者が打消し表示の存在を連想するか否かという点に加えて、②どの程度スクロールする必要があるのかという点等も勘案されます。

(5)Web広告(スマートフォン)

①初期状態ではアコーディオンパネルのラベルをタップしなければ打消し表示を確認できない場合は、ラベルを強調表示に隣接して配置する
②強調表示とコンバージョンボタン(「今すぐ申込む」「資料請求する」等のボタン)を同一画面に表示する場合は、打消し表示も同一画面に表示する
③強調表示と打消し表示を隣接させ、両者の文字の色や背景の色を統一することにより、強調表示と打消し表示を一体として認識できるようにする

ことなどが求められています。

 (参考:「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」消費者庁

4 体験談を用いる場合の打消し表示

体験談を用いる際は、体験談等を含めた表示全体から「大体の人に効果がある」と一般消費者が認識を抱く傾向があります。そのため、一般消費者の誤認を招かないようにするためには、その旨が明瞭に表示される必要があります。
具体的には、商品の効果、性能等に関して事業者が行った調査における(ⅰ)被験者の数及びその属性、(ⅱ)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合、(ⅲ)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示すべきとされています。

 

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※本記事は、下記の最終更新日時点の法令及び最新情報に基づくものです。

初回掲載日 令和4年9月6日

最終更新日 令和4年9月23日

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