執筆者:弁護士 原 隆(はら たかし) 原総合法律事務所 代表弁護士 |
1 EC(通信販売)とクーリングオフ
特商法では、訪問販売や電話勧誘販売など、消費者にとって唐突な販売方法に取引後一定期間中(8日間等)であれば、消費者から理由なく一方的に契約を解除できるクーリングオフの制度が定められています(特商法9条)。
しかしながら、通信販売においては、消費者は購入を決定するまでに十分に検討する時間が通常与えられていることからもクーリングオフ制度が定められていません。
2 法定返品権
そうとはいえ、通信販売においても、購入者は、商品の引渡しから8日以内であれば原則として契約を解除できる、というクーリングオフに類似した制度があります(特商法第15条の3)。一般に「法定返品権」という制度です。通信販売においても、買主は原則として8日以内であれば一方的に返品をすることが認められているのです。
しかしながら、この制度は、クーリングオフと決定的に異なる点があります。それは、販売業者側がこれと異なる「特約」を広告に表示していれば、買主は法定返品権を行使できなくなるという点です(特商法第15条の3但書)。つまり、販売者側が予めしっかり返品特約の表示をしておけば、買主は自由に返品をすることができなくなります。
3 返品特約の表示
このように、返品特約の表示は買主の法定返品権を奪う力を持つものですから、買主においてしっかりと認識できるように表示される必要があります。消費者庁(経産省からの移管)は、「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」を公表しています。EC・ネット通販において返品特約は次のような要素を満たすものである必要があります。
(1)表示内容
以下の事項に関しては、特に明瞭な方法で商品の広告画面で表示する
ⅰ 返品の可否(「返品不可」等)
ⅱ 返品の条件(「到着後〇日以内に限り返品可」「使用前に限り返品可」等)
ⅲ 返品に係る送料負担(「送料はお客様負担」等)
(2)表示方法
全ての商品に適用される共通のルール(共通表示部分)を設ける場合
ア 各商品の広告部分
- 広告中の各商品の説明箇所(商品価格等の重要部分に近い場所)において、①の事項を、商品価格等と同じサイズで表示する(標準設定で12ポイント以上の文字で表示する、色文字・太文字を用いる等して表示するなど)する。
- 返品特約がパターン分けされている場合に、「返品A」・「返品B」などの分類を表すマークの添付や文字を、明瞭な方法で表示する。
- 以上を行った上で、その他返品特約の詳細については、「その他、返品についての詳細はご利用ガイドをご参照下さい。」等の表示をし、そこをクリックすると共通表示部分を表示。
イ 共通表示部分
- 返品特約についての表示がどこに書かれているかを一見しただけで確認することができるように表示(例:「返品に関するお知らせ」等の表題を設ける)
- 返品特約における重要事項については、消費者が容易にその内容について認識することができるよう、その他返品特約の詳細よりも明瞭な方法で表示(例:商品の価格等と同じ文字の大きさとする、色文字・太文字を用いるなど)する。
- 1つのホームページ中で広告している様々な商品について、それぞれ異なる返品特約が適用される場合に、それぞれの商品について、いかなる返品特約が適用されるかを消費者に分かりやすく表示する。
ウ 最終確認画面
- 各商品の名称や価格等についての表示に加えて、返品特約について示したマークの添付や文字での表示を、明瞭な方法(標準設定で12ポイント以上の文字で表示する、色文字・太文字を用いる等)で表示。
- 返品特約がパターン分けされている場合に、「返品A」・「返品B」などの分類がなされ、それを表すマークの添付や文字での表示を、明瞭な方法で表示。
- 以上を行った上で、その他返品特約の詳細については、「その他、返品についての詳細は御利用ガイドを御参照ください。」等の表示をした上で、そこをクリックすると共通表示部分が表示される方法。
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※本記事は、下記の最終更新日時点の法令及び最新情報に基づくものです。
初回掲載日 令和4年9月6日
最終更新日 令和4年9月23日