執筆者:弁護士 原 隆(はら たかし) 原総合法律事務所 代表弁護士 |
Contents
1 景品表示法とは?
景品表示法とは、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、通称を景品表示法、景表法などといいます。
ECサイト運用では、商品を買ってもらうために商品説明を工夫したり、値引きや割引、キャンペーンやノベルティなどの企画がしばしば行われますが、行き過ぎた表示や景品はときとして、消費者が冷静な判断をする機会を奪ってしまうこともあるため、景品表示法は、事業者に対して商品・サービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを規制するとともに、景品類の最高額等を制限して過大な景品類の提供を制限しています。
特に、ECサイトでの表示は頻繁に摘発の対象になっているため、注意が必要です。
2 規制の内容
景表法による規制は、主に以下の通りです。
(1)不当表示の禁止
ア 優良誤認表示の禁止(5条1号)
商品やサービスの品質、規格などの内容について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示が禁止されています。
商品・サービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、消費者庁は、その事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、当該資料が提出されない場合、当該表示は不当表示とみなされます(7条2項)。これが不実証広告規制といわれるもので、通常は原則15日以内の資料の提出が求められ、事業者にとって厳しいものとなっています。
イ 有利誤認表示の禁止(5条2号)
商品やサービスの価格などの取引条件について、実際のものや事実に相違して競争事業者のものより著しく有利であると一般消費者に誤認される表示が禁止されています。
ウ その他誤認される恐れのあるものとして内閣総理大臣が指定する表示(5条3号)
① 無果汁の清涼飲料水等についての表示
商品名や説明文、イラストなどに果物等を使う場合、含まれる果汁・果肉の量が5%未満又は無果汁・無果肉であれば、果汁・果肉の割合、「無果汁」・「無果肉」等を記載する必要があります。
(参考:「「無果汁の清涼飲料水等についての表示」に関する運用基準について」)
② 商品の原産国に関する不当な表示
表示に原産国以外の国名・言語・国旗等が含まれている場合は、消費者が原産国を判別できるようにしなければなりません。国内産の商品で主要部分の表示が外国語のもの、外国産の商品で主要部分が日本語表示のものも同様に原産国を確認できるようにする必要があります。
(参考:「「商品の原産国に関する不当な表示」の運用基準について」)
③ 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
融資の際に、実質年率が明確に記載されていない場合、一部の利息や手数料、率の表示や返済事例などの表示などが不当表示となります。
(参考:「「消費者信用の融資費用に関する不当な表示」の運用基準」)
④ 不動産のおとり広告に関する表示
不動産の取引において、消費者を誘引する手段として、取引できない不動産などについての表示を行うと不当表示となります。
(参考:「「不動産のおとり広告に関する表示」等の運用基準」)
⑤ おとり広告に関する表示
一般消費者を誘引する手段として、取引を要挺していない商品やサービスの表示をすると不当表示となります。
(参考:「「おとり広告に関する表示」等の運用基準」)
⑥ 有料老人ホームに関する表示
有料老人ホームの施設・設備、サービスについて入居後の居室の住み替えに関する条件等が明瞭に記載されていない表示などは不当表示となります。
(参考:「「有料老人ホームに関する不当な表示」の運用基準」)
(2)景品類の制限及び禁止
景品表示法では、消費者が景品につられて粗悪な商品を買わされるのを防ぐため、過大な景品類の提供を禁止しています。集客施策として行う、お客様に対するプレゼントの提供や、懸賞企画も景品表示法にて規制されている可能性があります。(参考:「景品規制の概要」消費者庁HP )
ア 景表法で規制される「景品類」とは?
景表法上の「景品類」とは、①顧客を誘引するための手段として②事業者が商品やサービスの取引に付随して提供する③物品、金銭その他の経済上の利益、をいいます。
(参考:「不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」、「景品類等の指定の告示の運用基準について」、「景品類の価額の算定基準について」)
イ 一般懸賞
商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供することを「懸賞」といい、共同懸賞以外のものは、「一般懸賞」と呼ばれています。(例:抽選券、じゃんけん等により提供、パズル、クイズ等の回答の正誤により提供、競技、遊戯等の優劣により提供)。以下の限度額があります。
(景品類の限度額)
懸賞による取引価額 |
景品類限度額 |
|
最高額 |
総額 |
|
5,000円未満 |
取引価額の20倍 |
懸賞に係る売上予定額の2% |
5,000円以上 |
10万円 |
ウ 共同懸賞
一定の要件を満たす複数の事業者が参加して行う懸賞は、「共同懸賞」として実施することができます。この場合、以下の通り一般懸賞よりも限度額が緩和されています。
(景品類の限度額)
景品類限度額 |
|
最高額 |
総額 |
取引額にかかわらず30万円 |
懸賞に係る売上予定額の3% |
エ 総付景品
「懸賞」によらずに一般消費者に提供される景品類は、「総付景品(そうづけけいひん)」、「ベタ付け景品」等と呼ばれています。(例:商品・サービスの利用者や来店者に対してもれなく又は先着順で提供する金品等)
(景品類の限度額)
取引価額 |
景品類の最高額 |
1,000円未満 |
200円 |
1,000円以上 |
取引価額の10分の2 |
但し、以下のようなものは景品類であっても景品規制は適用されません。
①商品・サービスの販売に必要な物品又はサービス
②見本・宣伝用の物品又はサービス
③自己又は事故と他店で共通して使える割引券
④開店披露、創業記念等の行事に際して提供する物品又はサービスで
3 景品表示法に違反した場合
景品表示法に違反する不当な表示や、過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合、消費者庁は、調査を実施した上で、行政指導をする場合や、当該行為を行っている事業者に対し、不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる措置命令を行う場合があります。また、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じられる場合もあります。
(参考:「景品表示法違反行為を行った場合はどうなるのでしょうか?」消費者庁HP、「景品表示法における違反事例集」,「景品表示法関連報道発表資料 2022年度」消費者庁HP)
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※本記事は、下記の最終更新日時点の法令及び最新情報に基づくものです。
初回掲載日 令和4年9月6日
最終更新日 令和4年9月23日